中仙道に聳える花崗岩の南木曾岳



南木曽岳山頂

 報告者   :  佐々木英夫  
 山  名 南木曽岳  山行名 個人
 行程

京田辺6時00分・・・中津川IC・・R256号経由・・尾越から南木曽山麓蘭キャンプ場・・・9時10分登山口P(930m)・・・930分周回コース分岐(1100m)・・・9時50分・・・金時の洞窟10時30・・・高野槇の群落地・・・11時50分南木曽岳山頂(1677m)・・・12時10分展望台12時50分・・・14時30分周回コース分岐・・・14時40分登山口P(930m)

      所要時間5時間30分 比高747m  体力度★★ 技術度・難易度★★

 山行日  平成23年8月27日(土)  天候 曇り時々晴れ
 
 

「木曽路はすべて山の中である。」と島崎藤村は夜明け前の冒頭に述べている。信濃の奥深い山々の馬篭・妻籠の近くに一際、峻険な岩場の目立って聳えている南木曽岳は、坂田金時の「ふるさと」であるという。金時の伝承は過日、朝日岳から厳しい栂海新道を縦走した坂田峠にもあり、箱根の足柄山も然りであが、中山道の近くにもあったとは意外である。木曽三岳にも数えられている南木曽岳には何度か計画を試みたが、実行できなかった。剣岳や有明山を予定しているため、そのトレーニングにと天候のあいまを見て行ってみた。

登山口には3台の車が止まっていた。入山者がいるなーと心強く思い、林道ゲート横から遊歩道を進む。すぐに東屋があり、さらに進むと林道と合流、そのまま進む。前日の雨で渓流は水音を響かせている。花崗岩のため水は綺麗である。分岐に着くと標識があり、金時の産湯の池がある。左登り口、右下山道とある。20分程登ると、激しく流れる渓流を塞ぐように巨岩の組重なった下部に洞窟があり、金時はここで生まれたという。梯子を登り、渓流を渡り、喉の滝を過ぎると金明水があり、登山道は沢筋から山腹に取りつく。サワラ・檜・クロベや天然の高野槇の巨木が道の左右に天を突くように聳えている。木々は花崗岩の巨大な石に巻きつくようにして大地にしっかりと根をおろし生きている。  急峻な尾根を喘ぎながら、何度も立ち止まりながら、呼吸を整え、さらに階段や鎖場を登る。此のコースの最大の難路で、絶壁を巻くように木製の片持ち張の桟橋が続く。慎重に渡る。絶壁の頭から蘭(あららぎ)の集落が展望でき、さらに急登が山頂直下まで続く。カブト岩と表示があり、断崖絶壁のピークが行く手に屹立て見える。稜線部の地質は基盤の四万十帯に貫入した花崗岩からなり多雨,多雪によって土砂が侵食され、幾重にも組かさなった巨岩が露出している。 

植生がササ原に変わり、やっとの思いで山頂に着いた。展望はないが穏やかな山頂であった。ここから少し歩いたところに見晴台の大巨岩があり、御岳が展望できるという。この日は前山の裾野しか見えなかった。

道を下ると赤い屋根の避難小屋が見える。上原コースの分岐(女岩)標識があり、展望台に到着する。巨岩が二つならび、そばに山脈を記した模式図の標識が二つ立てられている。御岳から乗鞍岳、その後方に北アルプスの穂高連峰、更に中央アルプスの木曽駒ケ岳から宝剣岳,空木岳が、南は伊吹山まで展望できるまさに360度の絶好の場所であるという。3パーティが集っていたが、お目当ての山脈が見えないことをお互いに残念がって言葉を交わした。昼食をとり下山する。ササ原の中に累々と重なった巨岩、奇岩が残って見える。緑と黒のコントラストが美しい。降って山頂を振り返りながら、また登り返すと摩利支天分岐に着く。ここからは急坂の落ちて転がりそうな道を慎重に降りる。梯子、鎖場、木の根、岩塊の道は降れど降れど終らない。登りと同じ標高辺りにコウヤマキが聳えている。忍耐強く、ゆっくり足元に気を配りながら降ること1時間強、やっと周回コースの分岐に到着した。ここからは渓谷沿いの緩やかな道である。登山口Pに到着、近くの男滝・女滝を見て南木曽岳は無事終った。それにしても厳しい登り下りの道であった。

神やどる 巨岩の上に頑強に 命はぐくむ 槇の大木   ひでを

古代から人々は自然の中に神を感じ、信仰の対象として崇めてきた。南木曽岳は早くから山岳信仰の修験場として栄えたというだけあって、その峻険な岩場には、コウヤマキの群生地をはぐくみ、自然庭園風景の特色のある山容が、多くの人々に強力な印象を与えた山であろうと思った。

   
 ササ原に残る花崗岩の大岩塊  巨岩の上にコウヤマキの巨木が・・・!!!
写真提供 : 佐々木さん